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特定非営利活動法人  子育て応援・ペンギンくらぶ

ペンギンの子育て(茨城県大洗水族館海獣展示課 後藤武志さん談)

(2003年6月2日 アクアワールド茨城県大洗水族館にて)

今日は、皆様にペンギンの子育てについてお話するわけですが、限られた時間なのでざっとということになってしまいます。私は、「海のけもの」と書いて海獣展示課の後藤と申します。どうぞ、よろしくお願いします。 ペンギンくらぶ。この名前は、お父さんお母さんが仕事をしながら楽しく子育てができる環境をつくることを目標に名付けられたそうですが、まさにその通りでペンギンは全部で18種おりますが、どの種もお父さんお母さんが協力して雛の面倒をみます。しかし、卵を温める事(抱卵といいます)に限っては、お父さんお母さんが協力しあって温める事がないものが1種おります。それは何かと申しますと、皆様もよくご存知だと思いますが、エンペラーペンギン、和名で皇帝ペンギンともいいますが、ペンギンの中で1番体が大きいペンギンで、南極に棲んでいるペンギンです。 このペンギンは、体長120cm位あります。鳥の体長というのは私たちの身長とは違い足の裏側から頭のてっぺんまでではなく、お尻の方に尾羽があり、ここから嘴の先までです。伸ばした状態で嘴の先端から尾羽の先端まで測りますから、実際の体長よりは頭を曲げているので見た目はその数値より小さく感じますね。体重は23〜45kg位あるペンギンです。 このペンギンは、お母さんが卵を産みますとお父さんが足の上に乗せまして別に太っている訳ではないのですが、お腹の下に抱卵嚢というところがあり、これを卵にかぶせて温めます。お母さんはというと海に食べ物を獲りに行くのですが、その間の60日間お父さんは何も食べないで卵を温め続けるのです。エンペラーペンギンだけがこのような事をするのです。60日位すると卵が孵るのですが、まあ残念ながら卵が孵らないものもあるかもしれません。ただし、孵ったとしてもお母さんペンギンが帰ってこない、そのような時はどうするのかといいますと、お父さんペンギンは、もちろんお腹の中には何も食べていませんので何もないのですが、ペンギンミルクと呼ばれる胃液と胃の薄い膜の混じったものを子供にお母さんが帰るまで与え飢えをしのいであげます。 このように、お父さんが頑張るペンギンがおるのですが、他のペンギンはお父さんとお母さんが交代しながら、卵と雛の世話をするわけです。 ペンギンは繁殖地、コロニーといいますけれども、ここを離れて暮らしているペンギンもいれば、離れずに暮らしているペンギンもございます。当館のフンボルトペンギンも後者の方でして、一年中繁殖しているペンギンです。ちなみに当館では、昨年の8月に産卵が確認されてから、今まで産卵が続いております。 ペンギンは1年に1回、体の羽毛が抜けかわる換羽(かんう)がございます。早いもので6月から遅くて9月までの間に1羽当たり約2週間かけて行われるわけですが、その換羽の前まで産卵が見られるわけです。アクアワールド大洗ができて環境が良くなったのか、今までに8月になって卵が産まれるということはなかったのですが産まれたということは、やはりペンギンにとって良い環境になったということなのでしょうかね? つがい関係、まあ夫婦関係ですが、相手が死亡したりしない限り続けられます。水族館のように限られたスペースにおりますと、どこかの動物、まあ私たち人間のように、浮気をするものもおります。本妻が戻ってきて怒られて、浮気相手が追い出されているという現場を目撃することもありますが、その逆もあります。結婚相手ですが、相手が亡くなってすぐ相手が見つかるモテモテさんもいれば、これも人間と同じで、手当たり次第アタックするけれどもなかなか見つからないというペンギンもいるわけですね。 巣作りの方ですけれども、雄が大部分作ります。当館のフンボルトペンギンの場合ですと、よしずを20cm位切ったものを、何本も嘴にくわえて巣に持ち帰るわけですが、これも種類によって、巣を作るものもいれば、エンペラーペンギンやキングペンギンのように作らないものもおります。巣材の方も、小石などを利用して作っている種もいます。 この巣作りも要領のいいペンギンがいて、他の個体が一生懸命運んできて作った巣から、自分の巣へと巣材をくわえては、せこせこと横取りするものもおるので、なかなか巣が完成しない。そのような泥棒現場が目撃されては喧嘩になることもあります。また、巣そのものを横取りする不届き者もおるので、かなりのバトルが繰り広げられます。 この攻撃に使うのは何かと申しますと、ペンギンは嘴と翼です。ですから激しく喧嘩すると顔中血だらけになる個体もおります。このような嘴ですから、私たちも突付かれますと出血しかなり痛いです。そこに捻りが加わりますと青タンができるくらいです。翼の方も思切り叩かれるとかなり痛いです。 その他として交尾ですが、雌の背中の上に雄が乗って行われます。その時はですね、ウンチやオシッコ、そして精子も卵も出てくる所は最終的には同じで、総排泄口といいますがその部分を密着させて交尾を行います。 そして産卵するわけですが、通常ペンギンは2個の卵を産みます。先程のエンペラーペンギンやキングペンギンは1個しか卵を産みません。フンボルトペンギンは2個、まれに3個産むこともあります。卵は1日のうちに2個ポンポンと産まれるのではなくて、1個産んでから3〜4日してまた1個産むといった具合です。また、卵が割れて無くなったりしてしまいますと、さらに1個産み足すという事が生じます。 フンボルトペンギンの卵を立てた場合、おおよそ縦に長い方が7.5cm、横の短い方で5.5cm、重さが130g位あります。ペンギン展示プール脇の育児室の前にパネルがあって、実際の卵と同じ大きさの写真がありますので、そちらをご覧になればこの位の大きさの卵なのかとお分かりいただけると思います。 そして、産んだ卵を温めるわけですが、先程のエンペラーペンギンとキングペンギンは抱卵嚢の中に入れて立って温め、それ以外のペンギンは、下腹部の抱卵斑という羽毛が左右に分かれてピンク色の皮膚が裸出し、卵を包み込む場所で腹ばいになって温めます。抱卵斑の血管に血液が充満して膨らんで卵に直接体温を伝えることができるわけです。もし抱卵斑がなければ、熱が伝わりにくくなって、卵の胚が十分育つことができないというわけです。 雌雄交代で卵を温めるのは、フンボルトペンギンで約40日です。孵化の前になると、卵の中の雛は殻を破る前に鳴き出します。ピィーピィーと卵の中からでも聞こえます。そして、雛の嘴の付け根にある「卵の歯」と書いて『卵歯』これで1日から2日かかって殻を破り出て来ます。 フンボルトペンギンの孵化時の体重は約80〜100gあり、体は灰色で手の平に乗るくらいの小さいものです。あちらに、剥製が置いてありますのでご覧下さい。孵化した直後の雛は、「綿の羽」と書いて「綿羽」が薄いので、第二幼綿羽に生えかわるまでの約2週間、体温調整ができませんので親が温めて守っていることがあるようですね。 孵化したばかりの雛は、頭を上に上げて首を振っては甲高い声でピヨピヨと鳴きます。親から餌をもらうと、うるさく鳴いていたものも、コテッと寝てしまうのですね。目はもちろん生まれた時は開いていないのですけれども、そこで頼りになるのは親の鳴き声だけです。目は1週間位で開きだして見えるようになります。 成長すると、足と膨らんだお腹でバランスをとって立ち上がり、親の嘴を突付くようになります。ペンギンには餌袋というものがありませんので、食べ物は胃にためておいて雛に吐き出して与えます。親がかがむと雛は頭を親の口の中に突っ込み餌をもらいます。雛が大きくなると、親は餌を直接雛の口の中に吐き出します。こうしたやり方で、自分の親だけから餌をもらいます。 孵化後3〜4週間経つと、親は雛を保温したり守ったりする必要がなくなります。フンボルトペンギンですとそのまま巣にとどまります。しかし別な種のペンギンですと、雛を引き離して、いわば集団保育所みたいな「クレイシ」を形成することもあります。ただし、親はクレイシを保護したりはしません。何故クレイシを作るかというと、急速に成長する雛の食欲を満たすには、両親が海へ餌を獲りに行かなければならない時期がありますので、このような時期にクレイシを形成するわけです。 大きなクレイシの中の雛は、寄り集まって温めあったり、外敵に備える状態にもなります。1羽だけでいるよりも、捕食者から狙われる確率が少ないわけですね。 そして、雛も親の鳴き声と同様に、はっきりした個体差があります。鳴き声が個体間で違いますので、親は自分の雛を認識できるのです。親は雛をクレイシから自分の巣のあった場所に連れて帰りそこで餌を与えます。お腹の空いた雛は、海から戻ってきた親ではない誰にでも餌をねだったりしますが、本当の親からでないともらえないのです。 それでは、雛がどれ位の日数でどの位大きくなるのか?当館のフンボルトペンギンを例にとって体重の増加についてご説明します。孵化の時の平均体重が 87gといたしまして、2倍になるのが平均で8日齢の172gになります。10倍になるのは22日齢で876g位。20倍になるのが33日齢で 1771g。43日齢で大体30倍になって2608g。60日齢で40倍、3467g。このあたりで親と同じ大きさ・体重になってくるのですが、緩やかに成長を続け100日齢を超えて約50倍の体重になります。人間にたとえますと、3kgで生まれた子供が、3ヶ月ちょっとで150kgまで急速に成長しお相撲さんになってしまうような状態ですね。 その間フンボルトペンギンの親は、交代で餌を与え続けるのですけれども、早いものは半日で、遅いものは3日位で任務を交代します。最近は、巣に入っているままで親に餌を与えていますので、巣に居座っている個体もいます。雛は、先程の綿毛のような綿羽が抜けて幼羽に生え換わる70日〜80日頃、かってに巣より出ては誰に教わるわけでもなくプールを泳ぎ回っています。 野生ではそのまま巣立って生きていかなければならないのですが、飼育下ですとまた巣に戻って親に餌をねだるものもおります。100日齢を超えると、自分で餌を食べるようになるのですが、中には周りに押されてうまく食べられなかったり、食べるこつをつかめず餌をくわえても、すぐに横取りされたりしてしまうものがいます。そのような時には、プールより移動して犬用のケージに入れて自力摂餌ができるよう訓練し、ある程度摂餌が可能になった時点でプールに戻すこともあります。 そのような幼鳥もですね、1年たった夏にあの剥製のような成長の模様ができ、一人前の大人になります。当館では早いもので1年半で雌の個体に産卵が見られました。雄の個体は、先輩ペンギンに先を越されてしまうせいか、5年位たって相手を見つけ繁殖していましたが、最近はおませさんもでてきて、5年たたずにペアリング・繁殖しているものもおります。 ざっとではありますが、当館のフンボルトペンギンを例にとって、ペンギンの子育てについてお話しました。現在当館のフンボルトペンギンは全部で59羽おります。そのすべてが水族館で生まれ育ったペンギンです。その内の22羽は私たち飼育員が育てた人工育雛の個体です。一時は繁殖期になりますと、その内の 1羽の雄が、私たちの長靴に対して翼を使いパタパタとプロポーズしてきたのを見て、やはり、人の手で育てたので自分もペンギンではなく人間だ!と思っているのかな?と心配した時期がありました。その個体も、時期がきたら伴侶を見つけてようやく子育てをして、一安心したこともあります。 そのペンギンが今、当館のペンギンの中で一番長生きしているペンギンで、今年15歳になる、人工育雛で一番最初に成功したペンギンなのです。ペンギンも、みんなの周りの中にいれば、自分もペンギンなのだ!と気がつかされることもあるのかな?と思わされました。 あと、当館3Fにペンギン18種の生息地とミニチュアモデルがございます。そして、18種全ての鳴き声を聞くことができますので、是非そちらの方もご覧いただければと存じます。 ざっと簡単で申し訳ないのですが、これで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。